前提:
------琴子は直樹に対してひそかな不満を持っていた。
琴子は記念日と共に生きているといっても過言ではないくらい、季節の、そして二人の記念日を大切にしているのに、
直樹は、日々を淡々と過ごす。
せめて、直樹自身の誕生日、そして二人の結婚記念日だけは覚えていて欲しい。
琴子は、直樹の「一度聞いたら覚えてしまう」天才的能力を逆手に取ろうと決めた。
11月の記念日を調べ、自分達の記念日をねじ込み覚えてもらおうと企んだ。
話す時間は短ければ短いほどインパクトが強い。朝食時に作戦を決行することにした----
一日|二日|三日|四日|五日|六日|七日|
八日|九日|十日|十一日|十二日|十三日|14日
十五日|十六日|17日|18日|19日|20日|21日
※本文のリンク・文はいずれもwikipediaです(21日のみmill筆)
「入江くん、おはよー」
「おはよ」
「今日何の日か知ってる?」
「知らない」
「ふーん、入江くんでも知らないことってあるのね〜」
「…本題を先に話せよ。ったく」
「今日はね〜、紅茶の日らしいわよ!」
「…そう」
「ちょっ、ちょっと!あたしせっかく調べてきたのに」
「言えば」
「…えっと、昔日本の偉い人が紅茶を贈られたとか」
「偉い人って誰だよ」
「…忘れた」
「…」
「…」
「入江くん、今日何の日か知ってる?」
「…おまえは何ブームでそんなの調べてるんだよ」
「いいからいいから!」
「…で」
「う、うん!今日はタイガースの記念日なのよ、入江くん知ってた?」
「知ってたけど」「ええ〜つまんないの」
「俺は政治宗教野球の話はしないことにしてる」
「なんで?」
「あとサッカーもだな」
「?」
「わかんないならいいよ。コーヒーおかわり入れて」
「入江くん入江くん!」
「…今日は?」
「…なによお」
「早く言えよ」
「…今日は、なんと!まんがの日なので〜す!」
「そりゃまた」
「入江くん、漫画も読むんだよね!あたしも大好きなの!やっぱりラブストーリーが一番よね!くっつくかくっつかないか、じれったくてたまらないのよ」
「…俺らもそう思われてたんだろうな」
「えっ」
「なにも」
琴子寝坊のためうんちく披露なし
「入江くん、おはよ!」
「…おはよ」
「今日はいい5世代家族の日らしいわよ」
「…日本人はつくづく語呂が好きだな」
「えっ」
「いいご、世代」
「?」
「11月5日」
「!そっか〜!入江くんやっぱり物知りね〜」
「…コーヒー」
「はーい」
「今日は遅くなる」
「あれ?入江くん、今日は当直なしだよね?」
「沙穂子さんと会ってくるから」
「えっ!?なんで!?」
「さあ。お前、先寝てていいから」
「…入江くん…」
「じゃ行ってくる」
いい5世代家族の日 親・子・孫・ひ孫・玄孫の5世代の家族を通して血縁でつながった家族のありがたさや命の大切さを伝えるために、製薬会社ノバルティスファーマが制定。
「おはよ」
「入江くん、昨日遅かったね…」
「余計なこと考えてんだろ」
「だって…」
「昨日は…」
「な、なんの話したの?う、うたがったりなんかしてないわよ!う、うん」
「…大泉の会長と四人で」
「あ、ふたりっきりじゃなかったんだ!よかったあ!でも、四人って?」
「沙穂子さんの旦那」
「あ、旦那さんかあ。え!?旦那さん?!」
「結婚したんだよ」
「そうなんだ!わあ、おめでたいわね!」
「おめでたいけど」
「けど?」
「男女の産みわけ方法を聞かれた」
「へえ〜。お医者さんでもそういうの習うの?」
「知ってたらとっくに自分で試してる」
「た、試すって、入江くん朝から何言ってるのよっ」
「ああ、明日は非番だなあ。夜更かしできるなあ」
「いっ、入江くん!またからかってるんでしょ!」
「気付くのおせーよ。琴子、コーヒー」
お見合い記念日(日本) 1947年11月6日に東京の多摩川河畔で集団お見合いが行われたことに由来。 これは結婚紹介雑誌『希望』が主催したもので、戦争のために婚期を逃した男女386人が参加した。
入江くん非番のためうんちく披露なし
「入江くん、おはよ!歯磨いた!?」
「…さっき」
「今日は、いい歯の日なのよっ」
「…で」
「あたしね、歯だけは自信あるの!」
「ふーん」
「小学生のとき、歯のコンクールで入賞したんだから」
「ごはんある?」
「納豆にする?」
「ああ」
「で〜、全校生徒の前で表彰状渡されて〜」
「ネギ」
「あ、今切らしてるの」
「そう」
「で〜、校内新聞の取材にも答えたりして〜」
「コーヒー」
「前々から思ってたんだけど」
「なんだよ」
「納豆にコーヒーは邪道だと思うの」
「俺は好きなんだよ」
「…」
「なんだよ」
「もう一回今の台詞言って」
「"なんだよ"」
「違う、その前」
「"ネギ"」
「もう〜!遡り過ぎよっ!入江くんのいじわるっ」
いい歯の日(日本、2005年) 歯並びへの関心を高め、噛み合わせの大切さをPRしようと日本矯正歯科学会が制定した
「おはよ〜、入江くん!」
「おはよ」
「今日は〜」
「そろそろ飽きてくんない」
「えっ」
「なにも」
「今日は〜、ギネスの日なの!入江くん、天才なんだから一つくらい持っててもおかしくないのにね」
「なにを」
「世界記録」
「…お前はバランスのよさで狙えそうだよな」
「?バランス?」
ギネス世界記録の日 ギネス・ワールド・レコード社が2005年に制定。
入江くん非番のためうんちく披露なし
入江くん夜勤のためうんちく披露なし
「入江くん!おはよ!」
「おはよ」
「今日は早くかえって来てね!」
「なん…」
「いいからいいから!座って!今日のコーヒーはあ、ブラジルからの直輸入で〜」
「…」
「今日のハムはあ〜、こないだ朝おかあさまが市場で競り落とした豚を〜」
「…」
「うちのおとーさんが燻製にしたんだよ!で〜、パンは〜、おかあさまが今朝焼いて」
「おまえは」
「よくぞ聞いてくれました!」
「…」
「あたしは、もちろん今日のディナーを」
「今日食べて帰る」
「も、もう!!」
1972年 - 入江直樹、漫画『イタズラなKiss』に登場するキャラクター
入江家胃もたれの為朝食なし
「入江くん、おはよ」
「…おはよ」
「…お腹、どう?」
「…まあまあ」
「よかったー!」
「よかった、じゃねーよ」
「油の代わりにマヨネーズを使ったのがいけなかったのかな〜」
「入れすぎなんだよ!いつもいつも、お前野菜炒めにマヨネーズ何本使ったんだよ!マヨネーズ炒めになってたじゃねーか」
「…ごめんなさい…あっ、でもでも、自分の誕生日は覚えたでしょ?」
「…」
「今日は」
「なに」
「埼玉県民の日と大分県民の日…」
「…」
「飽きた?」
「お…おはよ」
「おはよ。派手に階段を落ちる音が聞こえたけど」
「ね…寝坊しちゃって!」
「ふーん」
「あ、入江くんごはん食べた?」
「今食い終わってコーヒー飲もうとしたとこ」
「ああああ、ちょっと待ってっ」
「…なんでだよ」
「今日はかまぼこの日だから、かまぼこ食べてって」
「…だからお前は何ブームなんだ」
「ほらほら、あたしが作ったの。タッパー開けてみて」
「…」
「…どお?」
「かまぼこってのは、練り物だ!お前のは…なんだこの弾力のなさ」
「味は美味しいでしょ?」
「…」
「わあ、全部食べてくれたの入江くんだけなんだよー!おとーさんも裕樹も、おかあさまも途中でリタイヤしちゃったの!うれしー!」
「そんなモン食わせんな!」
「おはよー入江くん!」
「おはよ」
「今日はねぇ〜」
「…」
「久しぶりに、じんこと理美と会ってくるの」
「…そう」
「F組のプチ同窓会って感じで、結構大きい飲み会になりそう」
「ふーん」
「で〜、久しぶりにカラオケでも」
「で」
「えっ」
「…今日は何の日なんだよ」
「えへへ、えっとお」
「なんだよ」
「いいいいいいじゃない、今日は…そうね!F組クラス会記念日?」
「言ってみろよ」
「…幼稚園記念日…」
「…」
「でも入江くんあんまり幼稚園にいい思い出ない…よね」
「…ない」
「…(だから言わなかったのにぃっ)」
1876年11月16日、東京・神田に日本初の官立幼稚園である東京女子師範学校附属幼稚園(現在のお茶の水女子大学附属幼稚園)が開園したことに由来。
入江くん夜勤のためうんちく披露なし
入江くん非番のため薀蓄披露無し
琴子夜勤のため薀蓄披露無し
「おはよー、入江くん!いよいよねっ」
「なにが」
「いいのいいのっ」
「はー、イブってワクワクするっ」
「なんだよ」
「いいのいいの」
「?…コーヒー」
「あ、はいはい、コーヒーね、うふふ」
「…」
「えっと、ちなみに今日はピザの日でーす、えへへへ」
「…」
「えへへ」
ピザの日
ピザの原型といわれるピッツァ・マルゲリータの名前の由来となったイタリア王妃マルゲリータの誕生日に由来。
「…」
「…おはよ」
「ひっ」
「何隠れてんの」
「ひっひどい!気配隠して近づくなんて卑怯よっ」
「…いいから居間入れよ」
「う、うん、ところで入江くん」
「なんだよ、今日冷えるな」
「そそうね、ところで今日のご予定は」
「食べて帰る」
「えっ」
「食べて帰るんだろ?」
「う、うん!ばれてた…?」
「一週間前から」
「えっ」
「病院の屋上に、アドバルーン飛ばしといてなに言ってんだ」
「えっ!?」
「…"入江くん、21日はフレンチ予約したよ"」
「えええっ!?し、知らないっ」
「…おふくろか…」
入江直樹・琴子結婚記念日。
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