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どっち?【R15閲覧注意】

 新婚旅行を終え部屋に帰ると、お義母さんがセッティングしたと思わしき、レースたっぷりのメルヘンの世界が広がっていた。

「わぁ、かわいい部屋!」

 あたしは床に荷物をおいて、ベッドに飛び乗った。鼻をくすぐるいい匂いがしてきょろきょろと周りを見ると、出窓には花が飾ってある。

「……最悪だな」

 入江くんはあたしのおいた荷物を部屋の隅に移動させ、しかめっつらでベッドに腰掛けた。

「いいじゃないぉ、あたしは好きだけどな」
「……熟睡できる気がしない」

 入江くんはため息をつくと、あたしを手招きした。

「ん?」

 近寄って隣に腰掛けると、入江くんはあたしの肩を引き寄せて抱きしめ、頬に手をかけて口づけた。急なことに固まっていると、唇がうごめいて口を開けさせられる。少しだけ開けると、入江くんはさらに深く口づけ、あたしを抱きしめたままベッドに倒れ込んだ。ベッドのスプリングに、あたしたちの身体が跳ねる。

 入江くんは片手であたしの服をまくり上げながら、口づけの合間にふっと笑いを漏らした。

「な、なに……?」

 ぼうっとなった頭で入江くんを見上げると、入江くんはにやりと笑ったままシャツを首から抜き、またあたしに覆い被さった。

「いいスプリングだな」
「そ、そうなの?」

 入江くんに上を完全に脱がされて、肩が冷える。まだ入江くんにすべてをさらすのには慣れない。手で胸を隠すと、入江くんはあたしの手をそっとほどいてベッドの上に置き、首もとに顔を埋めてきた。

「ちょ、ちょっと待って!あの、あのあたしシャワー……」
「待たない」

 身体を起こして抵抗を試みるも、背中に手を回されてブラをはぎ取られてしまう。足をばたつかせると入江くんは「ああそうか」と言って下まで脱がせてしまった。

「ちが、ちがうってばっ!」
「なにが」

 横抱きでベッドの中央に運ばれて、さらに深く口づけられる。あたしは雰囲気に飲まれないように頭をフル回転して入江くんに抵抗を試みた。

「あの、あのね、あの、い、入江くんはどっち」
「なにが」

 鎖骨のあたりに口づけていた入江くんが、おもちゃをとりあげられた子供のような不機嫌な顔をしてあたしを見た。

「み、右と左!ね、寝るのどっち?」
「左」

 入江くんは短く言い放つと、またあたしの身体に口づけてきた。鎖骨を通り、胸元まで降りてきたとき、あたしは気持ちよさに負けそうになりながら、回らない頭で言葉を発した。

「な、なんで左?」

 入江くんはご機嫌斜めの顔のまま、あたしの左に身体を横たえて、右手をあたしの胸に当てた。入江くんの行動はいつも急であたしはそのたびにうろたえてしまう。身体中がしびれて、心臓がドクドク鳴る。

「右手が自由に使えるから」

 入江くんはにやりと笑ってそのまま手を動かした。

「やっ、だめだってばぁっ」

 入江くんはあたしの抗議にかまわず、私に覆い被さりまた深く口づけた。
 

 


2010年5月7日up

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