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宝島<6>【R-18】

「なっ、やだっ、なにするのっ」
「和室で浴衣姿はだけさせるの、やりたかったんだよなぁ」
「じゃなくてっ、手首!」
「それも旅館の醍醐味だろ」
「ちょ、ちょっと、入江くん変だよっ」
「変で結構」
「やだやだヘンタイっ」
入江くんの瞳がゆらゆら揺れている。身体をよじっても浴衣が更にはだけるだけだ。入江くんの唇と舌が、熱を伴って身体を這う。温泉に入ったからか、身体がどんどん熱くなる。肩で息をしていると、入江くんは顔を上げて、押し付けるように唇を合わせてきた。深く割って舌をもぐりこませてくる。口の中をぬめったものが容赦なく探りとられていく。あたしはもう抵抗する気力も体力もなくなって、ただ入江くんが口づけの角度を変えるたびに息をするのが精一杯だった。
いつのまにか全てを脱がされて、全身を入江くんの荒い呼吸が撫でる。あたしの知らないところを入江くんが口づけていく。その様子をぼんやりと見つめていると、入江くんの少し潤んだ眼差しがあたしの視線に気づき、あたしの頭の横に肘をついた。手のひらで優しく頬を撫でられるだけで抱きしめられたような心地よさを感じる。膝を割られる。吸い込まれそうになるくらいの熱を帯びた眼差しに、あたしは目を閉じた。

  ***

結局入江くんは、いつもどおり寝かせてくれなくて、帰りのバスでは心地よい揺れにうとうとしていた。あたしは夢を見ていた。入江くんがきゅうりドーナツを食べている。
「美味しいよ、さすが琴子だね」
あたしは夢の中でドーナツ屋のオーナーになっていて、入江くんに褒められてキスをされていた。

 ***

目が覚めるといつもの天井で、あたしは部屋で寝ていた。
「……お早いお目覚めで」
「ん……入江くん?」
「ガキじゃあるまいし、バスの中で起こしてもぐずるわわめくわ」
 目をこすって起き上がると、入江くんは椅子に座り、足と腕を組んで不機嫌な顔をしていた。
「お、覚えてない」
「運良くタクシー拾えたからいいものの」
「ご、ごめん」
「二階まで運ぶの大変大変だったんだけど」
「ほんと、ごめんなさいっ!」
「ま、いいけど」
入江くんは立ち上がると、あたしの両手首をなにかで固く結んだ。
「えっ」
そのまま押し倒される。
「なにこれっ」
「なにって、浴衣の紐」
「ど、どうしてっ」
「ま、消耗品だし」
「ぬっ、盗んできたのねっ、だめじゃ……」
入江くんの吐息が顔を撫でたと思ったら、息をする間もなく唇を塞がれた。目を開けると、昨日より一層意地の悪い顔をした入江くんがあたしを見ていた。
「浴衣も良かったけど、洋服を着たままっていうのもいいなぁ」
「へ……へんた」
「ヘンタイでいいっていってんだろ」
スカートの裾から入江くんの手がもぐりこんでくる。
「それに、縛られて興奮しただろ?」
低い声で耳元で囁かれる。あたしは昨日と同じ心地のいいめまいに頭がくらくらして、観念して目を閉じた。



 

 

2011年3月12日up

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