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裕樹の日記より抜粋〜結婚式10日前からカウントダウン

11月11日

お兄ちゃんと琴子が結婚式を挙げるまであと10日になった。

お兄ちゃんは引き継ぎで忙しく、深夜にならないと帰ってこない。

琴子とママは浮かれていて、毎日毎日ドレスの写真を見せながら僕にどれがいいか聞いてくる。

マーメイドラインってなんだ?僕はお兄ちゃんじゃないからわからないし、正直困る。

夜お兄ちゃんに言ったら、「適当に相槌うっとけ」って、笑ってた。

お兄ちゃんが幸せならいいけど、本当に琴子でいいの?

11月12日

琴子が朝から元気がなかった。あんなにエステ、エステと騒いでいたのに、今日は行かなかったらしいし。

ママが言うには、マリッジブルーっていうものみたい。お兄ちゃんと結婚できる癖に、落ち込んじゃってバカじゃないのって言ったらママに殴られた。

夜部屋に篭ってる琴子を、ママが外にひっぱりだして、琴子の友達と飲み会をさせたらしい。

夜中廊下から琴子とお兄ちゃんの声が聞こえたから、ちょっと覗いたら、琴子がお兄ちゃんに迫っていた。

前見てしまった、お兄ちゃんと琴子のキスを思い出してしまって慌てて部屋に戻った。今日は数学の予習をしてから寝よう。

11月13日

学校から帰宅したら、めずらしくアイチャンおじさんとパパが居間で飲んでいた。

ちょうど昼間時間があったから、二人で「両家のますますの親睦を深めるため」に飲んでいたらしい。

僕には飲む口実にしか思えないけど。それにもう十分過ぎるくらい深まってるじゃないか。

夜はママと琴子は外食だから、パパとふぐ吉に行った。

頭の悪いおにいさんは、僕を見るなり「何回でも言うぞ!入江!幸せにせんと承知せんからなー!」と泣き叫んで店を飛び出して行った。

僕はお兄ちゃんじゃないって言ってるだろ!

11月14日

結婚式で僕が着るものをママと買いに出掛けた。

少し身長が伸びたみたいで嬉しかった。

なぜかそこにバカ琴子もくっついてきてて、趣味に合わない服を押し付けてくる。

マリッジブルーだっていうから我慢してたけど、センスのないやつを連れて来ても意味ないと思う。

結局琴子の意見を無視して服を買ってもらった。

ママと琴子と三人でご飯を食べた後、琴子はまたエステに行った。

お兄ちゃんは今日も残業で、まだかえって来てない。

11月15日

ママがひっきりなしに電話をかけていた。

琴子やお兄ちゃんから聞き出した友達に、絶対来るように念を押すためかけているらしい。

今日は琴子もお兄ちゃんも帰りが遅い。

琴子はいいとしても、お兄ちゃんが心配だ。

11月16日

琴子がやっとマリッジブルーから抜け出したらしい。

僕に、お兄ちゃん役をさせて模擬結婚式をしたいと言い出した。

「誓います」だけ言ってくれればいいから、って、僕は絶対嫌だ!

11月17日

夜中トイレに行ったら、ちょうど帰って来たところのお兄ちゃんと会った。

ここずっと、琴子とママにかけられてる迷惑の数々をしゃべったら、「悪いな」と頭を撫でられた。お兄ちゃんは悪くないのに。

「お姉ちゃんが出来るんだぞ」って言われたから、「あんな琴子、姉だなんて認めないよ」って言ったら笑ってた。

僕にはわからないけど、お兄ちゃんはやっぱり琴子が好きみたいだ。

11月18日

今日はお兄ちゃんがいつもより早く帰って来た。家族の夕食には間に合わなかったけど。

一人で食べるって言ってたけど、お兄ちゃんと話したかったから、食卓に参考書を広げて、お兄ちゃんと向かいあってコーヒーを飲んだ。

お兄ちゃんはなんだか考え込んでいるようで、食べるとすぐ二階にあがってしまった。また琴子がなにかしたのかな。あいつ。

夜中に勉強をしていたら、お兄ちゃんと琴子が散歩に出掛けていったみたいだった。

お互いぴったり寄り添って、琴子の体を引き寄せてるお兄ちゃんの後ろ姿は、やっぱり幸せそうだった。

しばらく見ていたら、琴子が石に躓いてこけた。ばか琴子。お姉ちゃんだなんて絶対呼ばない!

11月19日

お兄ちゃんも琴子もまだ帰ってこない。ママとパパはふぐ吉でアイチャンパパと打ち合わせに行ってる。

お兄ちゃんは、いつから琴子が好きだったんだろう。清里でお兄ちゃんが琴子にキスしたってことは、多分その時には好きだったんだよな。

昨日みたいに、本当はふたりっきりになりたかったのかもしれないな。

邪魔して悪かったな。

でも結果結婚するんだから、まいっか。

11月20日

お兄ちゃんが、やっと引き継ぎが終わったとかで、夕方帰って来た。

琴子はカルジェルとか、よくわかんないけど、とにかくエステに行って、最後の悪あがきをしてくるらしい。

そんなに遅くならないらしいけど、僕はお兄ちゃんと話がしたいから、琴子は夜中にでも帰ってくればいい。

部屋でお兄ちゃんに、「いつから琴子が好きだったの」って聞いたら、一瞬顔を歪ませて「ごめんな」って頭を撫でられた。

なんで僕に謝るのかわからないけど、急に涙が出て来て、お兄ちゃんにしがみついてしばらく泣いた。

お兄ちゃんには、ばれていたのかも知れないな。

でも、これはずっと僕だけの秘密なんだ。

胸がちくちくするけど、明日はお兄ちゃんの門出を心からお祝いできると思う。

もう僕は大人なんだから。

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