dependence. > 先生! > ●キスのシチュエーションで20題(その1、2)より-お互いの瞳を見つめつつ(高校)

●キスのシチュエーションで20題(その1、2)より

お互いの瞳を見つめつつ(高校)

 「じゃあ、第一志望は星北短大でいいな?」

 先生はそう言うと、進路指導表になにやら書き込んで探るように私を見た。
幸せを育てていこう。二人で。でもその前に現実が重くのしかかる。ここからは私が頑張る番。私は少しのプレッシャーを感じてうつむいた。

「うん……、合格できるように、がんばります!」
「おう」

 机に置かれた先生の手に触れて、そのままうなづき立ち上がると、手首を掴まれて机越しに肩を引き寄せられた。

「うわぁっ」

 お互いの吐息がかかりそうなくらい近くに先生の顔がある。先生の瞳はつい先日先生の家で見たように熱っぽく潤んでいて、目を離せない。学校で先生とこんな風に顔を近づけるのは久しぶりで、急に心拍数が上がってしまう。

「せ、先生……?」
「先生じゃなくて、彼氏としても……応援しか出来ないけど」

 そう言うと先生は私の頬を優しく撫でて口の端を少しだけ上げて苦く笑った。触れられている頬から先生の体温と気持ちが伝わって、学校にいるのにもっと触れて欲しくなる。先生の瞳の奥にわずかな光を感じたとき、急に目の前が暗くなって唇にやわらかいものが触れ、すぐ去っていった。頬が赤くなるのが分かる。足に力が入らない。

「……じゃ、次呼んできて」
「せっ……先生ーっ……!ここ進路指導室……!」
「今のじゃご不満?」
「っ……違いますっ!もう、もうもうっ……、今大事な話してたのにっ……!」
「はいはい、じゃあまた後でな」
「うう……」

 中途半端に触れられるともっと触れたくなるのに、先生はずるい。ドアを閉める時振り向くと、先生は頬杖をついてまだ私を見つめている。抗議の意味を込めて唇をとがらせると、先生は目を細めて優しい顔で微笑んだ。私の顔が更に赤くなるのがわかる。私は下を向いて勢いよくドアを閉め、教室へ戻る道すがら水のみ場で勢いよく顔を洗った。

2010年6月10日

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