dependence. > 先生! > ●キスのシチュエーションで20題(その1、2)より-壁に押しつけて(短大〜)

●キスのシチュエーションで20題(その1、2)より

壁に押しつけて(短大〜)

「何分待ってる?」

 薄明かりの洞窟のような通路で、タバコも吸えず手持ち無沙汰な先生は少しだけ不機嫌そうに私を見た。

「もう一時間も……かな」
「……もう帰らねえ?」
「せっかくここまで並んだんだよー、先生頑張ろう」
「ただのジェットコースターだろ」
「ディズニーランドに来たからにはこれに乗らないと」
「はー……」

 先生はため息をついて壁にもたれかかった。

「お前は楽しそうだよな」

 私の頭の上のミッキーの耳を指ではじかれ、私も壁にもたれかかかる。順番待ちの列は進む気配すら見せない。さすがの私も少しだけ億劫な気持ちがわいてきて、先生に気づかれないように小さくため息をついた。列の後ろを見渡して時計に目をやろうとしたとき、強く肩を押されて壁に戻された。見上げると、暗闇でも分かるくらい眉を寄せた、明らかに不満げな先生の顔が近づいてきて、心臓がどくりと鳴り出す。

「ちょっ……先生、ここ外……!周りに人も……」
「知ってる」

 先生は暴れる私をしっかりと壁に押さえつけて、顔を傾けて唇を重ねた。

「ちょっと楽しくなってきた」
「……もうっ……」

 耳元で囁いた先生は、先ほどとは打って変わって楽しげで、洞窟内を興味深げにぺたぺたと触りだした。乗り口はまだまだ遠い。列の前後の人たちの痛いほどの視線にさらされ、気恥ずかしさがこみ上げてくる。今度は私が早く帰りたくなった。

2010年6月18日

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