dependence.>text>お題でイタキス >001 : 遠い昔の話

001 : 遠い昔の話

エアコンのオートオフが効いていなかったらしい。

カラカラに乾いた部屋の空気が喉がはりつかせ、その奥で不快感が生じる。

耐え切れず琴子は目を開けた。隣の直樹を見遣る。

ベッドを下りる間際、まじまじとその端正な寝顔を覗き込んだ。

眉間に皺を寄せている。規則正しい上品な寝息。上下する喉仏から目を離せない。

一緒に寝て何年経つだろう。琴子は直樹の寝言を聞いたことがない。

直樹は夢を見る人だろうか。寝返りで跳ねた髪の毛をそっと撫で付けると、その唇から「ママ」と、少し掠れた声が零れた。

「ここにいるよ」琴子がつぶやくと、直樹は眉を緩めて少しだけ笑った。

2009年1月22日

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