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012 : 炎

入江くんがパンダイで秘書代理をさせられてからというものの、イリチャンパパのお友達が、事あるごとに家にくるようになった。話を盗み聞きしたところによると、部下と入江くんをくっつけたいという、なんていうのか…入江くん風に言うと、下世話な人なんです。でもその人が来ると、入江くんも家に顔を出さざるを得ないので、会えて嬉しい気持ちもある。乙女心は複雑なの。

「直樹くんは、彼女はいるのかい?」

つものらりくらりと交わす入江くんに、直球が投げ込まれた。あたしも知りたい、そこんとこ。いない、よね?

「世界中にいますよ」

口の端を上げてにやりと笑って、入江くんがソファーから立ち上がりこちらに歩いて来た。
いるのかな、いないのかな、いたとしてもあたしが1番入江くんを好きなんだから。

「馬鹿な妄想は大概にしとけよ」

自分でもわかるくらい顔を真っ赤にして立ち尽くしていたあたしのほっぺたを、指先でぎゅうとひねって入江くんが廊下に消えた。
入江くんの荒れた指先が、ちくりと頬に痛かった。この痛みがずっと残れば良いのに。


2009年2月9日

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