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041 : 覗き穴

  琴子は不思議な女で、こちら側にずけずけと入り込んでくるわりに、自分の本当の心を見せない不可思議な女だった。かなわない恋だと諦め半分なのか、自分の気持ちだけを押し付け、見返りなど期待をしていないように見えた。だからそのように反応すると、琴子は少しだけ安心したそぶりを見せて、「でも好きだ」と畳み掛ける。そして目の前からいなくなり、忘れた頃にまた愛を伝えにやってきたのだ。繰り返し繰り返し。

「大好きだよ」

 パジャマ越しにぬくもりを感じながら耳元でささやくと、琴子は安心しきったように俺に身体をゆだねてきた。俺は抱きしめ返しながら、やっと踏み込めたと安堵していた。


2010年3月9日脱稿/2010年4月up

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