dependence. > text >●キスのシチュエーションで20題(その1、2)より-眠りに落ちる直前の心地よさの中で
眠りが浅いと愚痴をこぼしたら、お義母さまがおちょこに少しだけお酒を注いでくれた。本当に少しの量だったのに、どうしてこんなにふわふわするのかな。足の先から頭のてっぺん、髪の毛の先まで熱くて気持ちよくて、あたしはおぼつかない足取りで部屋までたどり着き、入江くんの眠るベッドに倒れこんだ。やっぱり、ふわふわして気持ちがいい。
「どうした」
「えへへへ、お義母さまにお酒ちょっとらけもらったの……。これでぐっすり眠れるよぉ」
「お前……、酒弱いのに何やってんだよ」
「らって、らって……」
きつい口調でとがめられて、あたしは知らずに涙が出てきてしまう。どうして怒られなきゃいけないの?
「……わかったわかった、ちゃんと布団着ろ」
「ずっ……」
布団に潜り込むと、入江くんはあたしの腕を引いて強く抱きしめてきた。熱くて溶けそう──
「溶けちゃう……」
「なんなんだよお前は……。寝るぞ」
入江くんは盛大にため息をついて、それからあたしの頬を両手でそっと包んで、触れるだけのキスをした。唇から全身に、入江くんの唇の柔らかさが伝わって、あたしは目の前がぐるぐると回った。
「目が、回るよ……入江くぅん……」
「……世話の焼けるヤツだな」
入江くんは一定のリズムで背中を優しく撫でてくれる。あたしは入江くんの心臓の音と背中を撫でられる心地よさに、いつの間にか寝入っていた。
了
2010/06/30up